第2期公募班

A01制御工学

A01 高速動作可能な無限平面装置の開発

機械に振動は付き物であり,一般に高速動作時に振動は大きくなる。これら振動は適切に除去されなければならない。
地表徘徊性動物の行動をトレッドミル(ルームランナー)を拡張した無限平面上で観察することにより,長時間にわたる自由な行動や,外的刺激に対する反応の定量的な特性が明確化される。無限平面装置のうち球形トレッドミル・伸張トレッドミルの二形態は全方位車輪(駆動輪の外周上に,駆動輪の回転面と直交に受動回転する小車輪が組み込まれた,左右に滑ることのできる車輪)の駆動方向と受動方向の摩擦差を利用する。そのため不用意な振動低減部品の装着は,単に機構を複雑化するだけでなく,操作性を大きく欠損する要因にもなりうる。
そこで本研究では振動低減と操作性向上の問題を統合化し,この統合化問題を同時最適化問題として解く手法を確立することを目的とする。この過程を通じて,高速動作可能な無限平面装置を開発する。

 

岩谷 靖

(弘前大学)

 

大野 和則

(東北大学)

A01 光刺激を利用したイヌの長距離ナビゲーションに関する研究

申請者は、ロボット技術を利用して、イヌの行動や能力を拡張する研究に興味がある。本申請では、光刺激を利用してイヌの長距離ナビゲーションを制御する方法を開発する。イヌが動く明るい光を追う性質を利用して、訓練を受けた使役犬の行動を制御し、特定の目的地までナビゲーションを制御する研究に取り取り組んでいる。明るくて輪郭がはっきりしたスポット光源をイヌの異なる向きに搭載し、人間がジョイパットで光を照射する向きを変えることで、イヌの進む向きを変えることに成功している。課題は、長距離ナビゲーションを制御するまでには至っていないことである。本申請では、この課題を解決する。

A02データ科学

A02 モバイル深層学習技術を活用した動物ロギングのためのリアルタイム行動認識

本研究では,生物ロギングデバイスのような低コスト小型デバイス上で,主に映像を用いて動物の行動をリアルタイムに認識することを目的として,(1) 動物一人称映像の認識の研究,(2)タスクとデバイスに適応した小型深層学習ネットワークの探索,(3)センサ情報と画像認識を併用したリアルタイム行動認識の実現,(4)これらの手法を統合的に用いたロギングデバイス上での実装,の4点について研究を行います.これらの研究は,いずれも生物ナビゲーションおよびそのためのロギングデバイスに必要な新しい技術であり,低消費電力低メモリ下での深層学習ネットワークによる動物の行動認識という新しいトピックが創造できます.

 

柳井 啓司

(電気通信大学)

 

波部 斉

(近畿大学)

A02 群行動解析のための汎用映像処理プラットフォームの構築

鳥や魚などの生物の集団として振る舞いは長く研究対象として注目されてきたが,群行動を精緻に計測し,群れのナビゲーションのメカニズムを解明することは簡単ではない.そこで,群になって行動している生物を撮影した映像からその動きを獲得するための「汎用映像処理プラットフォーム」を構築する.
これまでも,市販ソフトなどで映像解析する試みは行われているが,撮影環境
や対象の大きさなどの条件が変わる度にチューニングが必要になるため,多くの環境・条件における生態を解析する際の障壁となっていた.本研究では,過去に蓄積した情報から有用なものを適応的に選択して,対象環境・条件における行動データを簡便・高精度に獲得する映像処理プラットフォームを実現することを目標とする.

 

A02 目的志向的な相互作用を含む集団移動系列・経路の解析手法の開発

複雑な動きをみせる生物などの群れでは、目的志向的な味方や外敵などの移動体との協力・逃避などの相互作用が起きています。一般に集団移動運動に関するデータ駆動的な解析手法においては、方法論的に明示的なモデルを仮定することが難しいため、未だ相互作用の性質を明らかにする決定的な方法論が確立されていません。これまで我々は、相互作用する集団移動系列のデータ駆動的な解析手法を提案し、集団スポーツ等において他者と多様な協働や競合を見せるヒト集団の移動運動を計測して検証してきました。本研究では工学的な目標として、集団移動系列・経路データから相互作用を可視化して分類や予測を行う手法を開発し、その科学的な応用として、目的志向的な生物集団移動の機能や原理などを発見・理解することを目的とした研究を行います。

 

藤井 慶輔

(名古屋大学)

 

大西 正輝

(産業技術総合研究所)

A02 超混雑環境における群集移動モデルの構築と安全なナビゲーションに関する研究

祭りやスタジアムなど多くの人が集まる場所は常に危険と隣り合わせである。本研究では大規模なイベントに集まる群集のナビゲーションに着目し、最適な帰宅動線を設計することや、状況に合わせて群集への提示情報を制御しながら適切に誘導することで安全で安心なナビゲーションを実現することを目的とする。本研究では特に指示に従わない人の再現するために、実際の混雑した環境において群集を計測することで、群集の目的地選択と移動をモデル化する。さらに、そのモデルを用いてシミュレーションを行うことで、最適な帰宅動線の設計や、効果的な情報提示による安全で安心なナビゲーション方法を科学的に明らかにする。

B01生態学

B01 外洋域におけるサケの産卵回遊ナビゲーション・システムの解明

近年減少傾向にある日本産サケのベーリング海から日本沿岸までの産卵回遊のナビゲーション・システム解明のため,ベーリング海において小型記録計をサケ大量装着し放流します。記録計に記録されたデータより本種が選択する水深・水温環境および水平移動の実態を把握し,海洋環境・天象・地磁気情報と比較しながら外洋域でのナビゲーション・システムを明らかにする。溶存酸素計付き閉鎖型循環水槽(スタミナトンネル)を用いて移動代謝コストを計測し,本種の長距離回遊の機構,適応的意義,日本回帰量の減少要因について考察を行い,将来の気候変動に対する応答予測や資源管理の提言を行います。

 

北川 貴士

(東京大学)

 

志垣 俊介

(大阪大学)

B01 アニマル・インザ・ループによる昆虫の適応的嗅覚ナビゲーション機能の解明と再構成

本公募研究班では,「アニマル・インザ・ループ」という新しいコンセプトを基盤に昆虫が持つ適応的な嗅覚ナビゲーションシステムを解明し,ロボットに再構成することを目的とします.ロボットやAIが進歩した今日においても,時空間解像度が低く,不確実性の高い物理量である匂いを頼りとしたナビゲーションはロボットにとって苦手とする分野ですが,有毒物質等の漏洩源や被災者の所在等を発見に応用できるため解明が期待されています.生物は,刺激に対する反射行動だけでなく適応的に行動調整することでナビゲーションをうまく達成しています.そのため本研究では,昆虫が異性などの匂い源への定位行動に着目し,ナビゲーション中に生じる環境および身体の変化に対して昆虫脳がどのように応答し,行動を選択しているか,そのメカニズム解明を目指します.また,適応的な行動選択がナビゲーションという機能にどのように貢献しているかを自律移動体に実装することで評価します.

B01 暗所血糖モニタリングに向けた発電センシング一体型血糖センサ

本研究においては、血糖発電と血糖センシングを一体化して行う発電センシング一体型血糖センサ技術の研究開発に取り組み、太陽光発電が利用できない暗所での電力自立かつ野生動物装着可能な持続血糖モニタリングを実現することをその目的とする。研究開発を通じて、生物ナビゲーションのシステム科学発展に資する、環境駆動のコンセプト実現への寄与を目指す。近年注目を浴びている持続血糖モニタリングを暗所でも実施可能とすることで、生物移動情報学の発展への貢献を目指す。

 

新津 葵一

(名古屋大学 )

 

佐倉 緑

(神戸大学 )

B01 経験とコミュニケーションによって形成されるナビゲーションの発現機構

本研究では高調波レーダーシステムを用いて、複数の人工餌場とランドマークを設置したフィールドでのミツバチの採餌飛行軌跡を記録し、ミツバチが探索や採餌によって確立する空間認識の様式とその時間にともなう変容を記述することを目的としています。

コロニーの働きバチを個体ごとに識別し、暗視カメラを用いて巣内での他個体とのコミュニケーションを常時モニターします。また、外に出てきた個体にはアンテナを取りつけ、毎回の飛行軌跡とその時の各餌場への訪問の有無についてのデータを取得し、個体の活動範囲の変遷と目的地までの飛行軌跡(採餌ルート)の変化を、巣内のダンス経験と合わせて解析することを計画しています。

B01 幾何学モデルによって被食者の多様な逃避方向パターンを統一的に説明できるか?

捕食者等の危険に対して被食者が逃げる方向は、動物種や実験条件によって大きく異なる。はてして、これらの多様な逃避方向パターンを統一的に説明することは可能なのか?本研究では、統一的な数理モデルの枠組みを提案し、移動様式が大きく異なる複数の捕食者-被食者系に適用することで、この問いに答えることを目的とする。
申請者は、実際の被食者(マダイ稚魚)と捕食者(カサゴ)の運動を詳細にモデル化し、被食者の逃避方向をシミュレーションで変化させ、「捕食され得る領域から被食者が抜け出す時間」と「捕食者がその抜け出す地点に到達する時間」の差が大きくなる逃避方向を探索した。その結果、実際の稚魚の逃避方向パターンが正確に推定された。本研究では、このモデルの枠組みを移動様式が大きく異なる複数の捕食者-被食者系に適用する。このことにより、一見すると多様な逃避方向パターンが1つの法則で成り立っているかどうかを検証する。

 

河端 雄毅

(長崎大学)

 

伊藤 健彦

(鳥取大学)

B01 「遊動」を予測する:モンゴル草原の環境条件と野生草食獣の移動・活動量の関係

世界的にも有数の長距離移動を行う陸棲哺乳類モウコガゼルは、特定の季節行動圏や移動ルートを持たない遊動的な種だとされています。しかし、これまでの衛星追跡により短期間の長距離直線的移動も観察されはじめました。適応的な遊動に必要な好適地探索能力と、長距離直線移動に必要な記憶やナビゲーション能力を兼ね備えるかもしれないモウコガゼルは、ナビゲーション科学の研究対象として大きな可能性を秘めています。生息環境が草原・砂漠であるため、地上の環境情報を時間的にも空間的にも高解像度で整備できる利点を活かし、詳細な追跡データと環境データから、遊動を予測するモデルの構築と検証を目指します。移動フェーズ(移動期・滞在期)による活動パターン変化の解析や、地域間比較も実施します。

B01 飛行型捕食動物の目標追跡ナビゲーションにおける戦術性の検証と最適な追跡航法の導出

逃げる目標を追うという行動は、刻々と変化する目標位置に対して瞬時に経路計画を更新する必要があるため、生物ナビゲーションの中でもとりわけ高度な処理が要求されるものである。本研究では、トンボやコウモリといった飛行型捕食動物の獲物追跡運動に着目し、その戦術性と、獲物を捕らえる上で最適な追跡の仕方を明らかにする。捕食者ロボットを用いた検証技術とコンピュータシミュレーションを駆使することによって、上述の目標を理論レベルではなく実証レベルで達成しようとする点が本研究の特色である。その成果は、動物の目標追跡行動の巧妙さを解き明かす一端になると共に、工学的に優れた制御機構の発見にもつながると期待される。

 

 

西海 望

(基礎生物学研究所)

B02神経科学

 

豊島 有

(東京大学)

B02 ナビ行動を生み出す神経情報処理の自由行動4Dイメージングによる解析

動物のナビゲーション行動は、外界の環境を感知し、必要な情報を取捨選択し、行動として出力するという入出力関係が明らかなので、神経回路における情報処理のしくみを明らかにするのに適した系です。線虫は全神経細胞とその接続が同定されており、少数の神経細胞が感覚統合や学習といった情報処理を担うことで、化学走性などの行動を生み出しています。その一方で、それぞれの神経細胞が情報を処理して行動を生み出す動的なしくみはほとんど解明されていません。代表者らは全神経細胞の同時観察がこうした問題の解決につながると考えて、線虫の全中枢神経の活動を同時に観測する4Dイメージング顕微鏡などを開発してきました。本研究ではこれらの手法を改良して、行動中の線虫の全中枢神経の活動と行動の同時計測システムや、環境や行動を考慮しながら神経活動を解釈するための時系列データの解析手法を構築して、神経回路における情報処理のしくみを明らかにすることを目指します。

B02 求愛中のショウジョウバエを用いた追跡ナビゲーションを制御する神経機構の解明

ナビゲーション中の動物は、さまざまな情報を手掛かりにして移動方向を調整し、ターゲットに到達します。その間、脳はどのようにして、多様な感覚情報を統合して移動戦略を決定し、ナビゲーション行動を制御するのでしょうか? 本研究では、ショウジョウバエのオスが複数の感覚情報を手掛かりに求愛相手に向かう追跡行動をナビゲーション行動のモデルとして、この謎に挑みます。

 

上川内 あづさ

(名古屋大学)

 

岩楯 好昭

(山口大学)

B02 アメーバ細胞の自律分散システムによる硬さ感知ナビゲーション

アメーバ細胞は基質の硬さという環境情報を取得して柔らかい方向に移動する。アメーバ細胞のナビゲーションは高等動物と異なり、情報処理を細胞内各所で行う自律分散的なメカニズムだと推察される。本研究の目的はアメーバ細胞ナビゲーションのメカニズム解明とその応用展開への足がかりの構築である。代表者は、細胞の伸展による伸展箇所へのミオシンII集積や、ミオシンII欠損細胞のナビゲーション能力の喪失も発見しており、ナビゲーションのメカニズムとして、基質の硬い方向に伸びた仮足にミオシンIIが集積しその仮足を退縮させるという“基質の硬さ場”感知仮説を提案する。この仮説において仮足の動きを決めるミオシンIIの動態は高等動物で四肢の動きを決める神経活動に相当する。メカニズム解明(仮説の証明)と自走ロボット開発や災害避難行動など多方面の応用展開への足がかりを得ることを目指す。

yoshiaki iwadate – iwadateのサムネイル

B02 海馬・嗅内野の空間表象を生成する神経演算原理の解明

哺乳類のナビゲーション行動には、海馬体という脳領域の「場所細胞」と嗅内野の「頭方向細胞」や「格子細胞」が重要な役割を担うと考えられています。これらの神経細胞の性質はこれまで綿密に調べられてきた一方で、これらの細胞の空間選択的な活動パターンを生みだす回路メカニズムは不明なままです。本研究は、ナビゲーション行動をおこなうラットにおける大規模な神経活動計測により、シナプスを介した神経細胞間の情報伝達を読み解きます。これにより、海馬体・嗅内野回路が、空間選択的な神経活動パターンを生みだすメカニズムを明らかにします。

 

北西 卓磨

(大阪市立大学)

 

佐藤 正晃

(理化学研究所)

B02 マウス社会性ナビゲーションの多感覚仮想環境における再構成とその包括的理解

本研究は、マウスの社会性ナビゲーション行動を多感覚バーチャルリアリティ環境において再構成し、その行動を支える神経回路活動をin vivoカルシウムイメージングで明らかにすることを目標とします。本研究ではまず、バーチャル社会行動課題時の神経回路活動をカルシウムイメージングで計測し、特定の脳領域に社会的刺激に選択的な神経活動が存在するかどうかを検証します。次に、自閉症モデルマウスがバーチャル社会行動と神経回路活動に異常を示すかどうかを検証し、そのメカニズムを明らかにすることを試みます。実験データは、データ科学者との共同作業による解析を推進し、神経科学とデータ科学との融合によるナビゲーション行動の包括的理解を目指します。